もう少し作品のことで紹介していくべき人なんだと思ってきたし、創作活動を通じてまたいずれ関わっていく人なんだと思っていた。
君は、出会い方も別れ方も突然な人だ。
それを自由と表現するのはちょっと寂しい気もする。
2017年、一つの舞台を完結させた。
「イキルシス」〜時は残酷で素晴らしい
コンセプチュアル・アートのようなイメージをステージ上で表現したような作品で、私にとって心のレクイエムとして作った作品でもある。故郷である九州の南から沖縄の方より伝わる言葉をモチーフにした「ニライカナイ」をコンセプトに輪廻転生と世界の現象の全てをループで表現した作品である。ある人とのこの世界においての永遠の別れから時が進み、心の整理がついたどこかのタイミングで私自身がこの先へと歩いていくためにも残しておきたかった作品の一つであった。
作品は、役者、ダンサー、演奏者、映像作家や、リキッドライティングのアーティストと多数のジャンルに渡った。半数以上は私が信頼する長きに渡る付き合いのある作家により構成され、舞台や制作のスタッフもありがたいことに大学時代の後輩などを中心に、本業でもお世話になっている音響さんや舞台監督さんなどにサポートしていただき、人のつながりの中で運営の土台を作り、舞台上の役者についてはオーディションで選ばれた方々による構成である。
役者、ダンサーなどに6名(男女)。その舞台のオーディションで出会った一人の役者兼任ダンサー、として知り合ったのが始まりである。
「急だけど、明日会えますか?」「いいですよ」そんな感じで急遽会うことが決まった。
既に幾つかのインディース映画などに出演歴があり、ダンサーとしても幼少期のバレエに始まり、長い間ダンスに身を置く日々だったようで、創作の分野においても表現者としての引き出しを多く持っている様子が印象的だった。
そして、本番当日は彼女見たさに多くのファンが訪れた姿もまた印象的だった。きっと多くの魅力が多くのファンをつけていったのだろう。
彼女は、いつも全力だった。
舞台イキルシスは、役者の中で最も出番の多い60分間ぶっ通しで踊り続けながら演技しながら、舞台上にもうけた細かいルール(アクティングエリアの制限と開放エリアへのスイッチなど)に頭も使う。しかし、リハーサルか本番まで一切手を抜かなかった。そして完璧だった。
以降仕事で何度かご一緒することになるのだが、そういえば、あるイベントの時は、遠くのリハであったにも関わらず、必ず駆けつけてくれたし、条件の良いとはいえない仕事や、関わった全員が「扱いひどすぎだろこれ!」と思うような劣悪な環境の仕事であっても、文句一つ言わずに黙々と完璧にこなしていた(彼女以外は、ほぼ全員主宰者にブーブー言いまくったけど笑)。
一度だけ、プライベートで釣りに誘ったことがある。
音楽系、舞台系やその仲間たちを誘った釣りだった。
人と人の出会いというのは、そこから新たに思わぬ仕事に発展すると言ったこともあるだろうが(現に1−2本仕事の声がかかったようだが)、当日の服装や持ち物が本格的だったので
「あれ?釣りよく行くの?」
と私が尋ねると
「いいえ、今回のために買って、練習してから来ました」
そんな人だった。
創作する作品について意見交換のやりとりをすることもあったが、
着眼点や視点、考え方や感じ方がとても独特で、それがアーティストとして惹かれた理由の一つでもあるのだが、仕事という面でも、抜群に頭が良いところが、また次も何か作品作りを頼みたい、そう思えるところだった。どんなに難しい意図も即座に理解してくれる。
とても素晴らしいアーティストだったと思う。
私がある関係者から知らせを受ける4日ほど前、彼女はこんな作品を残していた。これが生前の最後の作品ということになるのだろうか?